北海道で設計をしていると、どうしても冬の快適さをどう手に入れるかが課題となります。 昨今の高断熱・高気密住宅は、確かに家中どこでもストレスを感じることなく過ごせるようになりました。
ただ、豊かな暮らしはこれで事足りるのかと言うと、そうでもない気がするのです。
元々、日本人の生活は四季の移ろいと共にありました。 冬には冬の、夏には夏の時節を愛でる文化がありました。 鍋を囲んだり、こたつでみかんなんてのも、寒さがないと有り難みがわかりません。 こうした経験は、季節とともに刻印された思い出となり、大人になっても覚えています。
全室暖房によって、冬に薄着で冷えたビールやアイスが美味しいというのも、 冬の寒さをようやく克服することができた贅沢には違いありません。 一方で、家中暖かくなった今だからこそ、暖かさの有り難みを楽しむ贅沢もあると思うのです。
それは、ちょうど照明の明るさの有り難みと似ています。 部屋中、隈なく照らしてしまっては、明るさの有り難みはわかりません。 陰があるからこそ、明かりが際立つのです。
「Salon de Monogoto」には、寒さを慈しむ部屋があり、 薪ストーブによって暖を採る部屋をあえて作りました。
そこで、焼き林檎を作ったり、薪ストーブで沸かしたお湯でコーヒーを淹れるのも、 北海道の冬ならではの贅沢な過ごし方だと思うのです。
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