札幌
専用住宅
見えない居心地
「やじるしの家」では敷地の高低差がそのまま家のプランにも反映され、その高低差を利用して、床下間接暖房によって空気の循環を促している。 温水配管を埋設した土間スラブによって、暖められた空気は床下空間を上昇し、一番レベルの高い広縁やダイニングテーブルのスリットを通じて室内側へ出て、 最終的に吹抜けを通じて2階から外部へ排出すると同時に、この家で一番低いところから冷気を導入して空気の流れをつくり出している。 熱的に最も不利である床下に蓄熱し、暖められた空気が上昇することを利用して暖房するので、室内の温度分布は偏りがなく安定している。 この温水配管は玄関や浴室の土間スラブにも埋設されているので、冬靴はすぐに乾き、浴室も暖かく使用後はすぐに乾く。 一方、南側は熱の緩衝空間が庇状に張り出て、夏の日射を遮り、室内の温度上昇を抑えている。
実証 札幌のような寒冷地では木造住宅の場合、105 角の軸組の間に充填断熱をした上にさらに付加断熱をすることも多いが、「やじるしの家」では強度や断熱性を上げつつコスト的な制約と両立させるために、外壁は 120 角柱にしてその間に高性能グラスウール 24Kを120mm充填している。当然気になるのは熱橋梁となる部分だが、真冬日が一週間ほど続いた2016年2月9日に測定したところ、外気温-3°C、室温25.6°C、湿度35%という条件で、写真のような結果となった。 壁面温度は約19°C~26°Cと比較的安定しており、この条件での露点温度は9°Cですので、結露の心配もない。実際家にいると壁や窓からの寒さもなく、家中どこも暖かった。
NEXT
PREV
札幌市の郊外へ向けて幾筋もの尾根がある傾斜地に建つ、子供5人とご夫婦の家族7人の大所帯である。 家具のない床に近い生活を望まれ、家の中心に家族の集まれる大きなダイニングテーブルを掘り込み式で用意し、想像を絶する家事を効率よくこなすため、振り向くとキッチンがすぐ手の届く所にある。キッチンに続いて水廻り、家事室、納戸が一直線に並び、冬の洗濯物を干す場所と夏に庭に出られる動線を兼ねている。大きなダイニングテーブルの上は吹抜けており、キッチンから家全体の子供の様子がわかるようになっている。 家全体が間仕切りのない大きな一室空間であるが、外部が家の中に切り込んでおり、下駄箱や椅子、収納を兼ねた階段によって適度に分節され、性格の異なる空間がちりばめられ、家族の居場所と成長に応じて使い分けられるようになっている。