奈良
専用住宅
見えない居心地
「明日香の家」は古墳時代から続く歴史ある場所に建ち、様々な法規制が掛かっていた。 総2階建禁止、屋根を切妻とし勾配は4〜6寸、外観を漆喰や杉板にすることなどプランや形態に影響する。 そのガイドラインに従った新しい家々は「昭和」の街並みを形成しており、地域に相応しい魅力ある景観を創出しようという趣旨とはかけ離れた結果となっている。 この地域を外部からの新鮮な眼差しで見ると、北海道にはない重層した歴史と、北国では成し得ない空間的な魅力に溢れており、一種の憧憬にも似た感覚がこの家の計画に反映されている。 建物は厨子のような2階屋にすることで階高を押さえ、吹抜などを多用して単調な総2階建てに見えるのを防いでいる。 そこに大きくシンプルな切妻屋根で家全体を影で覆い、その下部に内部の延長として新たな空間を設け、この地域に馴染みのある深い陰影のある街並みとの調和を図っている。 これら屋根下の外部空間は主たる生活空間ではないが、クライアントの生活にはなくてはならないものであり、雨や外部の視線を遮りながら利用でき、概ね好評のようである。
余談 その後、北海道での暖房の設計ノウハウを取り入れたいお施主さんがいると声がかかり、再び明日香を訪れる機会に恵まれました。 明日香は冬寒く、夏を旨とすべしと言われた日本家屋に今日住み続けるには、夏の暑さとともに冬の寒さもなんとかしたいと思うのが人の常である。
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場所は奈良県明日香村。飛鳥時代からの歴史が色濃く残る場所であり、周囲には古墳や遺跡が点在する。 和風というものが確立する以前からの場所で、脈々と受け継がれた漆喰や和瓦、杉や桧といった技術や材料を現代に解釈しなおして形にした。季節の折に開放できる広間には深い軒がかかり、室内とも室外ともいえない半戸外が繋がっている。真ん中の丸柱は内外の結界を示すと共に犬を繋ぎ止める拠り所となっている。広間に雁行して食堂が緩やかに繋がり、そこから二階へと吹抜が続く。吹抜に面して子供の勉強コーナーがあり、家全体に気配が伝わるようになっている。主人の書斎や犬用の土間など用途に応じた部屋があり、二階の浴室と階段脇にそれぞれ軒に守られたバルコニーが外部からは深い陰影となって建物の表情を形づくっている。