東京
二世帯住宅
見えない居心地
寒冷地での設計ノウハウを生かして東京の気候に合わせた床下間接暖房を試みた。 「田園調布の家」は 60 代と 90 代の2世帯住宅であり、ヒートショックのない室内環境が必要と考え、床下に温水配管を埋設した蓄熱体を設け床下空間全体を温めている。 北海道では外断熱で覆われた基礎全体が蓄熱体となりうるが、蓄熱体の負荷が大きすぎると立ち上がりに時間がかかるのと、東京でのシロアリによる害が読めなかったため、基礎の内側に断熱で包まれた蓄熱体を設けた。 この延長で玄関と浴室の土間床にも温水が流れているため、家中どこでも温かい。 また新鮮空気の導入は壁から直接取り入れるのが一般的であるが、この家では必要換気量と風向きなどから逆算して、必要な分だけ土台の通気スリットを通じて導入しており、 不快なコールドドラフトの心配もない。 問題はこうした既製品に頼らない設計を実現できる施工業者がいるかどうかであったが、幸いにして施工実績のある設備業者と出会うことができ、今も時々快適な冬を過ごすための情報交換をしている。
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90歳になる母と60代の息子夫婦が住む二世帯住宅の建替えである。 永年慣れ親しんだ生活の記憶を変えずに近い将来世代交代が可能な住まい方を提案して欲しいとのことだった。 思い出深い敷地内の樹木をなるべく残し再移植した。こうすることで住まいは新しくなっても戸惑うことなく記憶のバトンを接げると考えたからである。一方、趣味のお茶をできる和室を新たに望まれていたため、客室を兼ねた茶室を一階に設けそこを世帯間の干渉帯としている。 現在は内部で行き来できる構造になっているが、将来的に独立二世帯となるように動線や水廻りなどが計画されている。