遺構

計画中の明日香の地。
赴く度にここの重層した歴史を、一枚一枚めくるように見て行くことにした。

現地には建物の遺構はもうすでになく、のどかな田んぼの風景から往時の繁栄の姿を想像することは難しい。ただ、目に入る小高い山々はそのほとんどが古墳であり、歴史上聞き覚えのある地名と、地面に残された建物の基礎や基壇が、確かにここがある時代に栄えたことを物語る。

 

確かなものがないから、想像で補う楽しさがここにある。

 

祭祀、古墳、大王、倭の時代から教典、寺、天皇、日本の時代へと移った飛鳥時代。
それまで古墳を築いては都を点々と移してきた時代から、仏教伝来とともに確かな礎石と共に歴史が明確に刻まれるようになった。

 

何故こんな海から奥まった盆地の山裾に王政を構えたのか。ふつふつと疑問が湧いてくる。そう言われると、日本の古代の都は多くが内陸に位置している。
ここに来て、弥生から古墳、飛鳥時代の知識はかなり曖昧で、日本を理解するのに欠かせない時代であると思うようになった。

 

今は慣れ親しんだ仏寺の風景も、当時は倭で唯一異国文化を感じさせる先端の場所であったに違いない。