
博士論文
弊社は普段、ご縁のあった個人の住まいを手掛けることが多いのですが、依頼される方々は、既製品の家には収まらないそれぞれ固有の事情があり、私の仕事はそれと向き合い、満足のいく解に導くのが重要な任務となります。
その意味では、手掛けるひとつひとつの住まいは、特殊解に違いありません。しかしながら、長年その作業を繰り返していくうちに、その背後に何か共通の文脈がある気がしてなりません。
それは、弊社に来るクライアントにたまたま共通する特性のようなものなのか、北海道という土壌が生み出すものなのか、時代のもつ空気なのかは定かではありませんが、いずれにせよ、特殊解の一部はもっと多くのひとにも通用する一般解となる可能性を秘めていると思われるのです。
直接携わることのできる、数限りある住まいに真摯に向き合うことも大切ですが、この20年間の活動で得た知見を文字で起こし、今の住まいの地平を拡げることもまた、経験を通した人間にしか語れない大切な仕事であろうと、この3年かけて博士論文を書き上げました。
修了式では、ほとんど同世代の保護者席の面前で、20年という月日の流れを感じました。
住まいで日常はもっと豊かになるを旨にこれからも。