みかんの居場所

冬になると、実家の和室の片隅に、段ボールに入ったみかんの箱が置いてあったことを覚えている。
今思えば、そこが家の中で一番冷える場所であり、保管に適していたのだ。
そこを通るたびに適度に冷えたみかんを手に、こたつにあたってそれを食べるものだから、よく冬の間は手が黄色くなった。
今の家にはそういう場所がない。
寒くなく住めるのは、北海道では歓迎すべきことなのだが、家中(床下まで)隈なく寒くないということは、裏を返せば、暖かさを感じる場所も、外が寒いことも忘れさせる。

 

「Salon de Monogoto」 には、あえて「外の部屋」という土間をつくった。
そこに薪ストーブを置いて、寒さの中の暖かさを体験できるようにした。
この土間は、暖房せずとも冬の間に零下にはならないこともわかった。
そこに、みかんや野菜を置いておく。もちろんビールやワインも。
冷蔵庫から取り出すよりも、心なしか美味しく感じるのは、なぜだろうか。